当然ながら,恋愛では相手との信頼関係が重要になってくるわけですが,若者の恋愛関係において,「一度相手の信用,信頼を失ってしまったらその後どうなっちゃうの?」みたいなことを調べたデータ(R)が出ておりました.
これは,ジョンズ・ホプキンズ大学らの調査で,青年期の問題や性的な問題でクリニックに通う16歳から19歳の122人の若い女性を対象に,毎日以下の質問に回答してもらう形で18か月間にわたって実施したものとなっています.質問の内容は大きく分けて以下の3つになっています.
- パートナーに対する信頼度(例えば,「彼のことをどのくらい信用していますか?」)
- パートナーとの信頼関係を損なう障害,ストレッサー(例えば,「彼には自分以外の別のパートナーがいると思うか?」とか)
- 2人の現在の付き合い方(例えば,「今日はプレゼントをもらいましたか?」とか,「今日はどのくらいの時間を彼と過ごしましたか?」)
これらの質問に回答してもらうことで,「パートナーとの信頼関係に問題が起きたとき,その後の信頼関係や付き合い方にどう違いが生じるのか?」を調べたわけですね.
信用も付き合いも単調にネガティブな方向に向かっていくのか,それとも信用の回復のために付き合い方に変化が生じたりするのか,みたいなことが考えられるわけです.
では,結果です.参加者のうち,十分にデータの取れた98人のデータをまとめると以下のようなことがわかりました.
- 1人のパートナーとの平均的な交際期間は24週間だった.
- パートナーとの間でストレッサーを経験した(「相手に別のパートナーがいることがわかった!(# ゚Д゚)みたいな)グループはそうでないグループに比べてその週の相手への信用のレベルが低く(3.03 vs. 3.42),その次の週もその傾向は続いていた(3.08 vs. 3.39).
- しかし,2週間後には,信用レベルに統計的な優位な差はみられなくなった.
オッズ比で見てみると,
- ストレッサーを経験したグループは,そうでないグループに比べて,その週に信頼レベルが下がる確率が3.3倍だった.
- ストレッサーの1週間後には,その前の週と比較して信用レベルが向上する確率は,2.09倍,2週間後では,2.31倍だった.
さらに,ストレッサーを経験した後の付き合い方を見てみると,
- ストレッサーを経験したグループでは,そうでないグループに比べて,次の週の付き合いのレベル(一緒に過ごす時間やプレゼントなど)が増えていた.
- ストレッサーを経験したグループでは,パートナーとの付き合いのレベルが1.37倍になっていた.
- ストレッサーを経験したのち,信用レベルの向上は,パートナーとの付き合いのレベルの65%の向上と関係がみられた.
という感じになっておりました.
つまり,この結果から何がわかるかというと,
- 若い恋人関係では,一度信用を失っても,一緒にいる時間を増やすなどして,すぐ信用のレベルを回復するんじゃないの?
ってことですね.確かに相手を裏切るような行為をすれば,信用はガクッと下がってしまうけれど,次の週にはもう信用のレベルは回復しはじめて,2週間もすればほとんど元の信用レベルにまで回復してしまうのではないか,と.
研究チーム曰く,
今回のデータは,関係性におけるストレッサーが,パートナーに対する信用に影響を与え,信用の低下の後で,2人の付き合いが増加する.
(中略)
これは,信頼と付き合いの間にバランスループがあることを示している.つまり,2人の間の体系のゴールは安定した高い信頼を保つ事なのだ.
とのことで,信用が下がっても付き合いのレベルを上げることで信用をまた高いレベルまで引き上げている,ということですな.
そりゃあ相手を裏切るような行為が何度も続けば,信用のレベルも回復しなくなってしまうかもしれませんし,もう少し大人の人にも同様にこの結果が当てはまるかはわかりません.もっとも,ひとたびパートナーの信用を失ってしまっても,相手と一緒にいる時間を増やしたり,相手とのアサーティブな関係の構築を見直してみたりすれば,また前と同じレベル,またはそれ以上のレベルにまで持っていける可能性がある,と考えてみると,なかなか有用なんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.それではまた.
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