仕事や勉強だけでなく、買い物や掃除など、私たちは多くのやるべきこと、やった方がいいことを抱えています。
しかし、必ずしもすべきことに真摯に取り組むことはできません。
「ちょっと仕事で疲れたから洗い物は明日やろう」とか「このタスクは明後日までだから今日はやっぱりやんなくていいや」とか、ついつい私たちは先延ばしをしてしまいます。
そのために、有効な手段として昔から使われているのが、「セルフデッドライン」の設定です。
つまり、自分自身でデッドライン、締め切りを設定してしまうことによって緊急性の意識を作り出し、それによって先延ばしを防ごうという方法です。
今日はこの「セルフデッドライン」に関して調べた研究(R)について簡単にメモ。
研究では、以下の3つの観点からセルフデッドラインについて調べられました。
- 先延ばしを予防するために締め切りを積極的に設定したいと思うか。
- 自分で課した締め切りはタスクのパフォーマンスを向上させるのに効果的か。
- 周りから締め切りを設定されたときと、自分で設定したときとでパフォーマンスは変わるか。
では、一つずつ見ていきましょう。
まず一つ目の実験では、99人の対象者を2つに分けて、3つの課題を提出してもらいました。
半数のグループでは、自動的に締め切りを設定して伝えたのに対して、残りの半数には、自分で、それぞれの課題を提出する締め切りを設定してよいと伝えました。
そしてもし遅延した場合にはペナルティを課すように伝えました。
その結果は、
- 自分で締め切りを設定したグループでは、3つの課題はそれぞれ、平均して最終締め切り日から41.78日、26.07日、9.84日前に締め切りを自分で設定した。
- 自分で設定した締め切りのうち、32%のみが最終締め切りの週に設定された。
- 参加者のうち27%のみが3つすべての課題を最終締め切り日に提出することを選んだ。
ってことで、自分で締め切りを設定してよいと伝えられたグループの人たちは、ペナルティを回避するために、先延ばしを予防する策として、自分で締め切りを設定することを厭わなかったということがわかります。
一方、他人から勝手に締め切りを決められたグループとの間の課題の成績との間には以下のような違いがみられました。
- 他人から締め切りを決められた方が一貫して成績が高いという傾向が確認された。
- もっとも、自分で締め切りを設定した人のうち、締め切りを単に3分割した人たちと、他人から決められた人たちとの間では、その差は小さかった。
ってことで、自分で締め切りを定めようとすると、他人から決められた時より十分な成果は出ないかもしれない。
でも、これは、自分でこれから取り組むタスクの所要時間を推測して締め切りを設定してしまうと、どうしても自分の能力を過大評価してしまい、所要時間を短めに予想してしまいがちになることによるかもしれない。
だから、例えば周りの人に締め切りを決めてもらうとか、それができなければ自分の過去の実績とかを比較したうえで締め切りを設定すれば、十分高いパフォーマンスを発揮することに寄与する、ということが考えられます。
2つ目の実験では、参加者にスペルミスや文法のミスを見つけてもらうという課題に取り組んでもらいました。
その結果も1つ目の結果と同様で、
- 自分で締め切りを設定した人たちは、一般に、単純に締め切りを等分した人たちよりもパフォーマンスが低下したけれど、締め切りを最後まで引き延ばした人よりは高いパフォーマンスを示した。
ってことで、やっぱり締め切りは設定しないよりは設定したほうが断然よくて、でも、その設定のしかたには注意が必要という結論になるでしょうか。
TODOリストよりもカレンダーにすべてタスクを書き込む方が生産性が高まるという話もありますし、試してみる価値は十分ありそうです。
参考になれば幸いです。それではまた。
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