運動が健康にいいのは間違いないところで、基本的には睡眠にもナイスな効果をもたらしてくれるわけです。ただし夕方や夜間の睡眠に関しては注意が必要で、実際、寝る数時間前の運動には以下のようなネガティブな影響が確認されていたりします。
- ストレスが増加する
- 概日リズムが変化する
- 交感神経系が活性化する
- 深部体温が上昇する
- 総睡眠時間やREM睡眠時間が乱れる
まあここら辺の影響はどれも今の時点で一貫してるわけではないですけど、スポーツ選手でもない限り日常的に運動するタイミングは仕事終わりとか遅めの時間になることも多いですから、何とも気になるところっすよね。
そんなところで最近読んだレビュー(R)では、「寝る数時間前~直前までの激しい運動が睡眠にどう影響するか?」を考えるヒントを与えてくれていて非常にいい感じでした。
ここでは条件を満たした16件の先行研究について系統的レビューを行い、さらに急性的な効果を調べた15件についてメタ分析を実施てくれております。全体の参加者は18~49歳の206人で、それぞれの運動の内容は大体こんな感じです。
- 運動の種類は5件がトレッドミル、7件がエルゴメータを使用している
- 強度の測定にはHRmax(90~95%)、HRR(70~80%)、VO2max(65~100%)などを使用
- 運動時間は25分から30分で、運動するタイミングは就寝の30~4時間前に終了するようデザインされている。時間帯としては午後4時~8時頃まで
そんで、就寝前の運動の各要素が総睡眠時間、睡眠効率、睡眠ステージの割合、寝る前の眠気等にどう影響するのかをまとめたら、結果はこんな感じになりました。
- 全体的に、就寝の30分~4時間前に行った高強度の運動はその後の睡眠にほとんど影響を与えなかった
- 詳細には、就寝の2時間前に激しい運動を行うと入眠までの時間が短くなり(-4.6分)、合計の睡眠時間が長くなっていた(+15.9分)。ただし、就寝の2~4時間前に運動するとレム睡眠の割合が減少し(-2.34%)、睡眠の質が低下していた
- 運動時間は短い場合(30分以下)よりも長い場合(30~60分)の方が睡眠においてポジティブな効果が確認された
- クロノタイプを考慮すると、夜8時の運動は朝型の睡眠の質を低下することが確認された。が、朝8時の運動は朝型夜型ともに睡眠に影響しないことが示されている
- サブグループ解析では、ランニングよりもサイクリングの方が入眠潜時の減少、ステージ3の睡眠時間増加を伴うポジティブな効果が大きく確認された
- また、最大強度の80%以上で運動するとステージ3の睡眠時間が増加する一方、65%~80%の運動ではレム睡眠は減少していた
- 主観的な睡眠の質に関しては、運動してもしなくても有意な違いはなかった
- 長期的(7週間)にわたって就寝前の運動を続けた場合、基本的には睡眠に大きな変化はなかったが、運動しなかった場合に比べて寝る前の眠気が増加したと報告された(客観的な睡眠時間は増加していない)
- 特に、日常的な活動量が少ない人ほど寝る前の運土によって睡眠が改善する傾向がある(睡眠時間が長くなるなど)
ということで、全体を見渡してみますと、寝る前に激しい運動をしても特段大きなダメージはなくてむしろメリットを得られるケースも多め、だけど個人のクロノタイプとか普段どれだけ運動してるかとかを考慮しておいた方がよさそうだよーって感じですね。
具体的に、以上の知見を日常に落とし込むとすると、以下のポイントに注意しておくとよろしいのではないかと。
- 夕方以降に運動することによる睡眠へのダメージに関してはそこまで神経質になる必要はない
- ただし、遅くとも就寝1時間前までには運動を終わらせるべき
- クロノタイプが朝型の人はなるべく夜の激しい運動は避けたほうがよさげ
- 睡眠へのメリットを追求する場合には、30分以上の比較的長めの運動を行うべきで、ランニングよりかはサイクリングマシンとかを使った方がいいかも