今月は21冊の本を読みまして、なかでもよかった6冊の本を紹介します。
デタラメ データ社会の嘘を見抜く
現代では数字とか統計とか図表とかを駆使してなるほど説得感のあるような主張が増えているような気もするけど、実際には、逆に騙されやすくなってるケースも多いから注意しようねーみたいな本。まさに「科学のもろさ」を扱った内容っすね。
具体的には、科学的っぽい主張にはどんな種類があるのかって話から、それをどう見抜けばいいのかってところまで言及されてて、少し頭に入れておくだけでも普段情報に触れるときの態度がかなり変わるはず。とはいえ込み入った統計の知識とか機械学習のアルゴリズムの理解みたいなとこまでは決していらないよ!ってスタンスなのもナイスなポイントじゃないかと。
なぜ科学はストーリーを必要としているのか──ハリウッドに学んだ伝える技術
どうすれば科学的な発見をわかりやすく、面白く伝えられるだろうか?を考えてる本。著者は科学者としてテニュア在職権を獲得したにもかかわらず、その後映画製作者になったというバックグラウンドを持つ変人で、「科学の最大の問題は、物語の文化が欠如していることだ」「ハリウッドの物語の文化を科学にも持ち込むべきだ」という考えがベースになってます。
単にAnd, And, Andでつなげると単調でつまんないけど、一方Despite, However, Yetを多用したような文章だと今度は複雑すぎてよくわからない。そこで、筆者が提案するABT(And, But, Therefore)メソッドをセンテンス、パラグラフ、文章全体というあらゆるスケールで組み込むことで説得的かつ惹きつけられる文章がつくれるのだ、と。
もちろんこのシンプルな手法は科学以外にもいろんな文脈で使えそうなんで、ちょい長めの文章を書く機会が多い人とかは読んでみるといい文章を書くヒントが得られるやもしれません。
人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」
ノーベル賞の発表を受けて再読(Amazonでもベストセラー1位になってました)。次世代シーケンサーの実用化によって放射性年代測定では難しかったヒトの起源のあれこれをまとめてくれてる一冊です。
出アフリカのルート、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の免疫系や言語系の違い、初の「アメリカ人」は誰なのか、iPSの技術でネアンデルタール人を復活させられるか、縄文人と弥生人の違い、沖縄人・アイヌと本島の人間の違いetc...そもそも好奇心をそそられるトピックが多いし、文化として習った教科書的な知識を遺伝子配列の面から考え直してみるという体験には心をくすぐられる人も多いのではないでしょうか。過去を見つめることで未来の人類の姿に対する妄想も浮かんできてかなり楽しい読書体験になるんじゃないかと思います。
性よくの科学 なぜ男は「素人」に興奮し女は「男同士」に萌えるのか
※あくまで大真面目に行われた性についての研究をベースにした本です。
性に関しては調べる回数も多く、最近では友人と会話する機会も多くなってきてますが、エビデンスベースの情報に触れる機会はまだまだ少ない気がします。そんな中で本書は大量の文献をベースに男女の性行動、欲求における違いをわかりやすく説明してくれてて、非常にいい感じでした。
特に男性の方が女性の趣向に対して勘違いしている点が多い気がするんで、ベッドの上でグレートな生活を送りたい殿方は、一読しておくといろいろと恩恵がありそうな予感がします。
なぜペスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎で真面目な科学
こちらも当然エビデンスベースの超絶真面目な本。しかし先ほどの一冊が男女の違いがメインになっていたのに対して、本書はとにかく進化・適応との関連で主張が繰り広げられてて、進化心理学とかがお好きな人にはこちらがおすすめ。
竿の長さから玉の位置、毛の有無、脚フェチまで、とにもかくにもこれがヒトの進化においてどう影響してきたのか?みたいな内容になってます。もちろんタイトルの疑問についても、それなりに納得感のある一つの答えが得られるはずであります。
クスはなぜ楽しいか
どうせなんで最後にもう一発(冊)紹介しておきましょう。こちらも2冊目同様進化に沿った性のお話がなされてて重なる点も多いんですが、本書では特に授乳(男性の授乳も含め)の話はユニークでした。
3冊の中で最もライトなボリュームなんで、「そんなのあたりまえじゃん」って感じで考えたこともなかった性のテーマについて考える入門書として本書を読んでみるのもありでしょう。