「常時接続」された現代社会においては、いかに回復・補充のプロセスを確保できるかが超重要。しかし休息ってのは休日や仕事終わりの時間帯だけでなく、たとえ仕事の合間、数分程度の休憩であってもある程度は回復を図れるわけです。
そこで新たなメタ分析(R)では、「作業の合間のマイクロブレイクによってウェルビーイングやパフォーマンスは向上するのか?」「最適な休憩時間はどのくらいなのか?」ってあたりを調べてくれていて、長時間労働が身に沁みついちゃってる私としては非常に参考になる内容でした。
ってことで、ここでは過去30年間に発表されたマイクロブレイクに関する22の文献をピックアップし、マイクロブレイクによる効果を検討しております。分析に含まれた11の研究は学生を、10の研究は従業員を対象にしていて、総参加者数は2335人、平均年齢は31.2歳で、休憩時間は8秒~10分に限定されてます。ちなみに、休憩時間には仮眠、ビデオを見る、音楽を聴くなど、様々な活動が含まれていたらしい。
で、その結果がどうだったのかといいますと、
- マイクロブレイクは疲労感を下げ、活力を高め、認知的パフォーマンス(記憶力、エラー率など)が高まる傾向があった。しかし、認知的パフォーマンスに対する効果については統計的に有意ではなかった
- 休憩時間、タスクの種類、参加者のタイプ等は、疲労感、活力に対する効果に影響を与えなかった
- 一方、休憩時間が長い方が休憩後のパフォーマンスが向上していた。また、認知的負荷の高いタスクよりも、単純作業課題または創造性課題の場合にマイクロブレイクの効果が顕著に表れていた
だったそうです。要するに、マイクロブレイクは仕事中のウェルビーイング(疲労感、活力)の面ではタスクの種類によらず「万能薬」として働くし、休憩時間が「スイッチング」としての機能を果たすことでクリエイティブなアウトプットにもポジティブな影響をもたらすのでは?ってわけですね。
ただし、この結果だけを見て「ほかの頭を使う課題では休憩は無意味!」って結論するのは尚早だぞ!って注意されてまして、
- 休憩後には疲労感が減り、活力が高まる結果、主観的にはより生産的になってる!と感じられる
- 一部の研究では、休憩をとった後にパフォーマンスが大きく向上したという報告もある
- 少なくとも休憩後にパフォーマンスが損なわれるという可能性は低そう
- サブタイプで分類すると、認知パフォーマンスに関する効果だけが異質である
ってあたりが指摘されてます。職種だったり別のモデレーターによって違いが出るのかもしれないってわけで、タスクの種類によらず短時間の休憩をとっておいた方が無難そうな印象ですね。
以上の結果を受けて研究チーム曰く、
実用的な観点からは、これらの結果は、労働時間中に短い休憩を取ることが個人の健康と生産性に有益であることを強く支持するものである。自動化の加速とCOVID-19の大流行により、常に監視と注意を必要とする座り仕事(例えば、オンライン教育、リモートワークへのシフト)は、依然として問題である可能性がある。個人の幸福とパフォーマンスを守るために、短い休憩を取ることがより必要になる可能性がある。したがって、組織は、個人と組織の成果にとって「常時オン」の文化の有用性を再考する必要がある。
とのこと。「いつでも働ける!」って状況だからこそ「休憩」の重要性をしっかり考えないといかんよ!ってことですね。
余談ですけど、本稿で取り上げられてたマイクロブレイクに関する面白いデータをメモっときます。
- ストレッチや運動などの体を動かす休憩は、ポジティブ感情の増加及び疲労感の減少と関連する
- 人と関わる休憩(友人や家族との連絡など)は活力の増加と関連する
- 非常に短い休憩(27.4秒~40秒)でも注意やタスクパフォーマンスの向上に役立った
ってなわけで、疲れたなーって時には体を動かす、やる気しねーなーって時には人と連絡を取ってみる、ってな具合に、休憩時間の過ごし方に選択肢を用意しておくとよいかもしれないっすね。また、1分足らずの休憩でも効果はある(かも)ってのもなかなか心強いですな。
よし、10分休憩しよう、、