「今月読んで面白かった本」シリーズの2022年4月編です!今月は16冊の本を読みまして、なかでもよかった6冊をまとめてみます。
逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せ
FBI主席交渉人としてのキャリアを持つクリス・ヴォスさんが心理学研究とあまたの経験をもとにした交渉術を教えてくれる本。ヴォスさん曰く、
本書はいわゆる通俗心理学の本ではない。これは、FBIでの二十四年のキャリアと、世界最高峰のビジネススクールや企業で教鞭をとりコンサルティングを行ってきた十年間の経験をへて、そこで学んだ教訓から生み出した有力な心理学的理論に基づき深く考え抜かれた(そして何をおいても実用的な)見解である。
とのことで、テロリストとの交渉からちょっとした値引き交渉にまで応用できる普遍的な交渉のテクニック(考え方)がまとめられてます。人質交渉なんて経験する人なんてめったにいないでしょうが、取引先との交渉とか、子供に言うことを聞いてほしいとか、結構使える場面は多いんじゃないでしょうか。
あと、FBIの交渉の場面のエピソードとかは読んでて面白かったですねー。
人に頼む技術コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学
コロンビア大学の社会心理学者であるハイディ・グラントさんが「どうやって人に頼めばいいの?どうすればOKしてくれるの?」ってところをまとめてくれた本。グラントさんは「やり抜く人の9つの習慣」とか「やる気が上がる8つのスイッチ」とかでも知られる先生ですね。
紹介されてる実験とかは有名どころが多いんで、「そのテクニックは既に使ってるよ!」って思う方も多いかもしれません。ですが、「誰かに助けることは自分だけでなく相手にとってもメリットになる!むしろ助けを求めないことの方が利己的なのだ!」ってあたりの話には勇気づけられましたね。断られることをビビりすぎちゃうんだよな…っていう(私みたいな)人にオススメです。
他人を支配したがる人たち:身近にいる「マニピュレーター」の脅威
パーソナリティ障害の治療・研究を行う臨床心理学者が、マニピュレーターの本性を暴き、その対抗策まで提案してくれている一冊。「マニピュレーター」ってのは攻撃意図を隠したまま、周到に考え抜かれた狡猾な方法でヒトを思いのままに操ろうとしてくる人のこと。表面的には何も間違ってなさそうに見えるせいで、「嫌がらせされてると感じる自分の方が悪いのでは…」って感じちゃうのが悩ましいんですよね。
「なんかいつもあの人の言いなりになってないか?」って心当たりのある人とかは、早めに一読しておくだけでもメンタルをボロボロにされる前に手を打てるようになるんじゃないかと。
言語はどのように学ばれるか――外国語学習・教育に生かす第二言語習得論
長年外国語教育や第二言語習得を研究してきた著者たちが、「ヒトは外国語をどうやって学ぶの?」「子供と大人で学習過程にどう違いがあるの?」「どうやって教えれば学習速度がブーストされるの?」といった様々な角度からの研究を紹介してくれている一冊。基本的には教員を想定されてるんでしょうが、子供に英語を身につけさせたい親御さんとかもちろん自分で外国語を学びたい人にも役立つ内容が見つかるはず。
まあ、「この方法を使えば必ず英語ができるようになる!」みたいな唯一解がわかるってわけじゃないですが、今までの学習法を見直し、それが本当にベストな方法なのか?と見つめなおすには十分でしょう。
しかし本書は少々ボリュームがありますんで、「研究なんてどうでもいいから効率のいい勉強法を教えてくれよ!」って方には以下の本なんかをおすすめしておきます。
どれも「言語はどのように学ばれるか」よりボリュームは圧倒的に少ないわりに、そのコアは抑えられてるし、何より著者が日本人なので、私たちが躓きやすいポイントを理解してくれているのがれしいところです。
瞬間のちから
「アイデアのちから」「スイッチ!」「決定力!」などで知られるみんな大好きハース兄弟が、「『瞬間』に秘められた力」を解き明かし、それを戦略的に作り出す方法まで紹介してくれている一冊。
人間がすべての出来事を平等に記憶しているわけはないってのは経験的にもよくわかる話で、一つの出来事の中のある一瞬が全体に対する評価を決定づけるのだ!って話になってます。なんか小難しそうな気もしますが、例えばある旅館に泊まったときの例がわかりやすいです。つまり、全く同じスケジュールで同じ旅館に泊まった場合でも、「帰宅後、子供が忘れてきたぬいぐるみが楽しそうに旅館生活を楽しんでいる写真を送って寂しがってる子供を安心させてくれた!」って経験をすると「あのときの旅行は(全体として)最高だったよな!」って気分になるというわけですね。
この瞬間はだらだら過ごした何十年という時間に勝る場合も多く、仕事でも恋愛でも家族でも友人でも、人といい関係を築きたい!って人が読めばなにがしか得るところはあるんじゃないでしょうか。
英語コミュニケーションの壁を超えるストラテジー―Communication Strategies
米国人とのコミュニケーションがうまくいかないTOEIC満点者がいる一方、中学英語だけで米国人と仲良くなっちゃう人がいるのも事実。その違いは文法や語彙力じゃなくて、「褒められたらこう返答する」「反対意見を述べるときはああする」「誘いを断るときにはこう言う」といった「暗黙の作法」によるものが多かったりするんですよね。
この作法は文法や単語帳をいくらやりこんでも身につくものではなく、別途の訓練が必要。しかし米国人も違和感を指摘してくれなかったりそもそも彼らも何に違和感を感じているのか言語化できなかったりするので、なかなか困っちゃうわけです。そこで本書は、「日本人が米国人とのコミュニケーションで感じる壁」の正体とそれを乗り越える超基本的な方法が簡単なワーク形式でまとめられてます。
全部で50頁程度しかなくてさくっとやり終えられるはずですが、効果は思っている以上に大きいかも。私も米国人相手に試してみたところ「なんか会話の雰囲気良くなったな、おい!」みたいなことを言われまして、「なんか英語だとコミュニケーションに壁を感じるんだよな…」って思っている人が読めばその壁が急に低くなったように感じるかもしれません。また、大体の定型文を覚えておけばその間に次話す内容を考える時間が作れるのもうれしいですよね。