オフィスワークが盛んになり、照明器具が一般的になったおかげで昼夜の区分が曖昧になっている現代において、「太陽の光を意識的に浴びるようにしよう!」ってのは大きなテーマの一つになっております。
なにせ、太陽の光を浴びないと体内時計が狂って睡眠に悪影響が出るし、うつになりやすくなっちゃうしで、太陽の光を避けるとタバコを吸うのと同じくらい体に悪いといわれていたりするんですね。
そんな状況下、近頃出た大規模な研究(R)では、やっぱり「太陽の光を浴びてると睡眠やメンタルにナイスな効果があるみたいよ!」「逆に浴びとかないとまずいかもよ!」って結論になっております。
先日も、新型コロナで行動制限がかかっていた中でも、太陽の光によく当たっていた人は心身の健康を保っていたよ!ってなデータを紹介したんですけど、近頃は感染も比較的収まってきたし、季節的にも外出しやすくなってきたってことで、改めて日光のパワーを確認しておいてほしいと思ってこの話題を取り上げることにしました。
日光が睡眠やメンタルに与えるメリットを再確認してみたぞ!
これはモナシュ大学の研究で、UKバイオバンクに登録されてる502,000人以上の男女を対象にしたもの。全員の健康データを統計処理して、普段太陽光に当たってる時間と体内時計に関連する指標との関係を調べたんですね。もちろん季節による日照時間の差異も考慮されております。
「体内時計に関連する指標」ってのは、睡眠や気分、うつ症状、クロノタイプなどのこと。この手の研究としては非常に規模の大きいものとなっておりまして、非常に参考になる内容でしょう。
で、年齢や季節、雇用状況、運動、睡眠時間、どのくらい人と接触しているかといった要素を調整した結果、こんな感じのことが分かりました。
- 1日に日光に当たる平均時間は2.5時間で、朝型のクロノタイプ、朝が得意と答えた人のほうが太陽に当たる時間が長かった
- 太陽の光に当たる時間が長い人ほど、
- うつレベルが低く、抗うつ薬の使用量も少ない!
- 幸福感が高い!
- 神経症の傾向が低い!
- 気分が落ち込む頻度が少ない!
- 無快感症の人も少ない!
- 眠れない日が少ない!
- 倦怠感を感じる日が少ない!
って傾向がはっきり出たそうな。
太陽の光に当たる習慣は数年単位でもメリットがある!かも
さらにこの研究では、平均4.3年間の追跡調査も行っておりまして、その結果は、
- もともと太陽の光に当たる時間が長かった人は、数年たっても日に当たる時間が長い傾向があった
- 太陽の光に当たる時間が長い人は、その後に
- 気分の低下
- 無快感症の発症
- 神経症傾向の上昇
- 抗うつ薬の使用量の増加
- 不眠や倦怠感の頻度の増加を経験するリスクが低かった
- 逆に、もともと気分、無快感症、神経症、抗うつ薬使用量、不眠等の点が健全だった人は、その後、日光に当たる時間がなお長い傾向が見られた
だったそう。要するに、太陽の光を積極的に浴びている人はメンタルや睡眠の問題を抱えづらいし、逆にメンタルや睡眠の問題が少ない人は太陽の光を積極的に浴びるんだ、と。
横断的な結果に比べればどうしても効果量が少なくなってはしまうんですけど、長期的にもポジティブな関係が維持されるんじゃない?ってのはなかなか興味深いポイントっすね。
日光に当たらなければならない理由は?
「そもそもなんで太陽の光を浴びないといけないの?」って点に関しては、以下のような仮説が提唱されてます。
- 日中光を浴びると、睡眠・覚醒行動に関連する概日リズムの異常を修正することで気分を改善する(概日リズムの遅れは気分の悪化と関連することが分かっている)
- 日中に太陽光を浴びると、体内時計の信号(振幅)を増大し、その結果偏桃体や手綱核といった感情処理にかかわる脳領域が調節される
てな感じで、日中に光を浴びておくと、人間のサーカディアンリズム、体内時計をベストな状態に修正してくれるんじゃないの?ってわけですね。ほかにはビタミンDや一酸化窒素の増加が原因じゃない?ともいわれたりもしていて、まあ、この辺の厳密なメカニズムはまだまだ分からない面も多いわけですが。
そういわれても日焼けが怖くって……
「そうはいっても観察研究に過ぎないやん!」といえばその通りなんですが、同様の結果は世界中で確認されておりますし、ほんの数百年位前まで人類の体は否が応でも日中に光を浴びて夜は基本暗闇、みたいな生活に適応していたのは間違いない話。
最近では「日焼けの健康リスクは誇張されすぎじゃない?」って説も有力で、適度な日光浴ならほとんど害はないと考えられてますんで、過度に日光を避ける理由はないでしょう。
メンタルや睡眠以外にも、日に当たっとかないと肥満になりやすかったり寿命が縮んだり頭が悪くなったり…みたいにいろんな領域で健康リスクにかかわるなんて話もありますしね。
そんなわけで、日光は(浴びすぎも問題だけど)それなりに浴びとくといいよーってことで。
冒頭でも述べた通り、また第〇波が到来する可能性は低くありません。振り返ってみれば、少しでも外に出やすかった今は貴重なタイミングだったな…なんてことも十分ありますんで、心当たりのある方はお気を付けくださいませー。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!