新型コロナのパンデミックで人々の生活がどう変わったの?って話題はこのブログでも以前に取り上げていて、
みたいな話をしました。このような傾向は別の研究でも多く確認されていて、特に睡眠に関していえば、
- 睡眠時間は伸びた
- が、夜更かしする日が増えた
- 社会的時差ボケは改善した
ってなことが報告されています。パンデミック期間中には不眠症の人の睡眠の質が大きく改善した!なんてデータもあって、睡眠には比較的いい影響もあったみたいなんですよね。
一方で、人とのかかわりが絶たれたことでうつやストレスのスコアが高くなったり、主観的な生活の質の低下が確認されているのも事実。
そんな状況下、近頃出た論文(R)では、「外出制限に伴う睡眠や生活の質への影響は、太陽に当たった時間に関係しているんじゃない?」って話になっていて興味深かったのでした。
太陽の光は人間の体内時計を調整し、心身の健康を整えてくれるわけですが、外出自粛によって太陽の光を浴びる時間が減ってしまった結果、いろいろな面で影響が出たんじゃない?って考えたということですね。
コロナで生活や睡眠がどう変わった?
これはアリエル大学などの研究で、18歳以上の男女7,517人を対象にしたもの。「行動制限の前後で日に当たる時間がどのくらい変わったか?」ってのを調べて、それと睡眠の質や仕事の生産性、人生の質、運動量等との関係を分析したんですね。
対象者としては日本を含む40か国に住む人たちが含まれておりまして、集められたデータは2020年4月~5月くらいのものとなっております。また、調査期間中に在宅勤務をしていたのは全体の66%だったとのこと。
世界的な「第1波」の時のデータなんで、現在ではちょっと状況は違っている可能性はありますが、十分参考になる内容ではありましょう。
で、調査の結果を、まずは基本的な情報から確認してみると、
- 外出制限によって49.6%の人が人生の質が低下したと報告した。同様に、身体活動(51.0%)、仕事の生産性(66.8%)、睡眠の質(34.2%)も低下していた
- 特に睡眠に関しては、睡眠時間が15分長くなり、睡眠の中央時刻が34分遅くなり、社会的時差ボケ(平日と休日の中央時刻の違い)は30分短くなっていた
- 1週間の太陽の光に当たった時間は、中央値で約1時間短くなった(1時間47分→45分)。また、総参加者の70%以上が太陽の光に当たる時間が短くなったと回答した。この傾向は特に若い人に顕著だった
って感じ。予想通り、ロックダウン等によって睡眠などの日常習慣が変化し、太陽の光に当たる時間も著しく短くなっていたわけですね。
太陽に当たる時間とウェルビーイング
それで、太陽の光に当たる時間と諸要素との間にどんな関係が見られたかといいますと、
- 日光に当たる時間が短くなった人ほど、睡眠の質、QOL、運動量が低下し、スクリーンタイムが長くなった。仕事の生産性との間には有意な関係は見られなかった
- 睡眠との関係では、太陽に当たる時間が短くなった人ほど、寝る時間が遅くなり、社会的時差ボケも大きかった。この関係は、睡眠時間等の変数とは独立して確認された
だったそうで、太陽に当たる時間の変化だけに絞ると、QOLの低下の3.2%、スクリーンタイムの増加の5.6%、身体活動量の低下の2.1%を説明できるくらいの値だったらしい。
この数字だけ見るとたいしたことないように思えるかもしれませんが、さらにスクリーンタイムの変化等を組み合わせると、睡眠や生活の質の変化をより正確に予測できたんだそう。太陽に当たる時間を増やして睡眠の質が改善すれば、トータルしてQOLも上がるってわけです。
研究チーム曰く、
日中の光を浴びると、注意力、気分、活力、認知機能を向上させ、体内時計が調節される。外出する時間を制限すると、心理的にも肉体的にもネガティブな影響が及んでしまう。
パンデミック期間中、特に人とのかかわりに制約が課される中でウェルビーイングを向上させるには、より多くの日光浴を促すべきである。
とのこと。日に当たることが睡眠やメンタル等にいい影響を与えてくれることは多くの研究で確認されておりまして、それはパンデミックの時でも無視しちゃいけないってわけですね。
在宅勤務でアラームを使わなくなったんだけど、それはなんか関係ある?
以上をまとめると、
- 行動が制限される中でも睡眠や生活の質を低下させないように、人混みを避けて太陽に当たる時間を作るとともに、スクリーンタイムは制限する!
ってことを意識しておくといいかもしれません。日常が大きく変わってストレスがたまるのは避けられないとしても、個人でできる限りの対策はしておこうという話ですね。
この研究ではそのほかにも面白い知見が得られていて、
- 起きるためにアラームを使うのをやめた人は、アラームを使い続けた人に比べて睡眠の質と生活の質が向上した。が、仕事の生産性は低下した
- アラームの使用の変化は、身体活動量とスクリーンタイムとは有意な関連は見られなかった
だったそう。このデータだけを見てアラームを使うかどうかを決定するのは難しいと思うんで、これはご参考までに。ご要望があればアラームに関する研究もまとめてみたいと思います。
そんなわけで、引きこもりすぎず、日に当たる時間を設けておこうね!っていう話でした。日に当たっている人のほうが新型コロナからの回復率が高いなんて報告もありますしねー。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!