ということで,新しい論文(R)では,「仕事における燃え尽き症候群と抑うつって実は同じことなんじゃない?」みたいな点を調べた問題を調べてくれていて面白かったです.燃え尽き症候群っていうのは,仕事をしていたら急に,「もうどうでもいいや…」「自分はなんで働いているんだろう…」みたいな気分になって何のやる気もなくなってしまう現象のことですな.
燃え尽き症候群(バーンアウト)は,仕事のストレスなんかからメンタルがダメージを受けて,何事にも意欲を失うって点で,原理的には抑うつと同じなんじゃね?って点は近年で結構主張されていたんですよね.
これはヌーシャテル大学の確認的因子分析で,フランスとスイスのトータル3,113人分の5つのサンプルをもとに,「抑うつ」と「バーンアウト」の関係が調べられました.5つのサンプルってのは,
- スイスの教師
- フランスの教職員
- スイスの専門家
- フランスの教師
みたいな感じ.職業上のドメインの異なるこれらの参加者に抑うつの症状を計るテストと,バーンアウトの度合いを測るテストにそれぞれ回答してもらいました.
もし抑うつとバーンアウトが別物であるなら,抑うつは抑うつで,バーンアウトはバーンアウトでそれぞれの回答項目との相関のほうが大きくみられるはずで,他方との相関は小さくなるはず,と考えられるわけですな.
で,その結果はというと,
- 5つすべてのサンプルで,抑うつとバーンアウトの相関のほうが,それぞれの他の項目との相関よりも大きかった.
- この関係は「疲労」に関連した項目を排除した場合でも確認された.
だったそう.要するに,抑うつとバーンアウトは「疲労」なんかでは説明できないもっと深いレベルでのつながりがある!ってわけですな.
研究チーム曰く,
この研究は,バーンアウトと抑うつの区別は人工的なものであることを示している.我々は,職業上の健康管理の担当者は,バーンアウトの症状を現わしている従業員に対して,「伝統的な」抑うつの症状を体系的に測ることを推奨する.
とのこと.この人は燃え尽き症候群だからこういう対処,あの人は抑うつだから違う対処,とかしてしまうと,不十分,最悪逆効果になる可能性もあるかもしれんのですな.
もちろんこの結果だけ見て,「燃え尽き症候群は抑うつにほかならない!」と断言はできないわけですが,重なるところも非常に多そうってことで,対処法も互いに応用できそうってことで考えていただくといいんじゃないでしょうか.例えばジョブクラフティングとかマインドフルネスとかね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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