「サウナが健康にいい!」という話はよく耳にします.そんなサウナの効果を示唆する研究も多くて,例えば,サウナに入ると,
- 心血管系のリスクが減る!
- 血圧が下がる!
- 脳が若返って認知症になりづらくなる!
みたいな話があったりします.サウナのような高温の状態に身を置くことで,心血管系がそれに適応しようとして血管を広げてくれたりすることによっていろいろメリットがあるようなんですよ.
それに伴って,「血管の炎症も押さえてくれるんじゃないの?」みたいなことを調べた論文(R)が出ていました.ご存じの通り,炎症は体を老化させる「万病の元」と言われていて,スーパーエイジャーの人は炎症レベルがやたら低いというデータがあったりもします.
これはフィンランドの健康な男女20人(平均年齢66歳)を対象に行われた実験で,以下のような3つの介入をランダム順に行ってもらいました.
- サウナ(温度80℃,湿度20%)に,10分間1セット入る.
- サウナに10分間を2セット入る.
- サウナの外で10分間座る.
これらの前後でIL6, IL-1RA, CRPそれぞれの変化が調べられました.どれも炎症マーカーとして有名どころですね.
それでどんな結果が出たかというと,
- 2セットサウナに入った後ではでは,IL-6の値が増加していた(+0.92 pg/mL [+0.16, +1.68], P = 0.02)が,1セット入っただけでは優位に増加していなかった(+0.17 pg/mL [-0.13, +0.47], P = 0.26).
- IL1-RAの値は,1セット入った後でも,2セット入った後でも増加していた(それぞれ,+51.27 pg/mL [+20.89, +81.65], P < 0.01, +30.78 pg/mL [+3.44, +58.12], P = 0.03) .
- CRPの値には優位な違いがみられなかった.
だったそう.IL-6,IL1-RAに関してはなかなかの成績じゃないでしょうか.CRPに大きな差異がみられなかった点に関して研究チームは,
急な刺激の後にCRPの濃度が変化するには最大で6時間かかることから,これは決して予想外ではない.したがって,CRPに対するサウナによる炎症への影響は長期的な介入の後にのみ観察される可能性がある.
とコメントしていて,今回の実験のような短期の観察では変化が生じなかったけど,長期的に見れば有意な影響を与えている可能性は十分にあるということですな.
ちなみに,IL-6濃度がサウナに入ると上昇するメカニズムについてははっきりしませんが,動物実験では,熱にさらされることで骨格筋がIL-6を分泌するというデータがあったりします.
もちろん今回の実験の結果がそのまま日本人やもっと若い世代の人,心疾患リスクを持つ人に当てはまるかはわかりません.
もっとも,運動や食事の補助的に,血管のアンチエイジングの一環として,サウナに適度な時間はいるのは有効な手段なんじゃないでしょうか.血管が若返れば脳も含めて体全体に大きなメリットがありますからねー.
参考になれば幸いです.それではまた.
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