免疫系にまでダメージをもたらす夫婦の特徴
結婚している人は、未婚の人よりも病気や死亡のリスクが低いという研究は多数ありますけど、一方で結婚により結婚していない人と同じか、それ以下の健康状態になったというデータがあるのも事実。
では、どのようにして夫婦間の関係が健康に影響するのだろうか?その答えの一つは、「夫婦間のネガティブなコミュニケーションパターン」にあるのだ!という研究が出ておりました。要するに、建設的なコミュニケーション(問題を冷静に話し合ったり協力したりする)ではなく、一方が問題を解決しようとするのに対してもう一方が逃げたり無視したりする(要求・回避)、話し合いの相互回避(両者が問題を無視したり表面的に扱ったりする)、みたいなパターンにより健康が損なわれるぞ!ってわけですね。まあこれらのコミュニケーションがいい影響をもたらさないのは想像に難くないですけど、これが免疫系など様々な側面でダメージをもたらすってのは面白いところでしょう。
こちらは米国オハイオ州立大学の研究で、夫婦間のネガティブなコミュニケーションパターンが、身体的な傷の治癒速度や感情、会話の評価にどのように影響するか?を調べる実験を行ってます。参加者は結婚している43組のカップルで(平均年齢58歳)、みんなには血液検査を受ける(炎症反応を示すインターロイキン6(IL-6)の測定)、吸引水疱創(小さな水ぶくれ)を作成する、夫婦間で会話をする(良い話題と悪い話題)といった手順を踏んでもらったらしい。さらに普段のコミュニケーションパターンの報告してもらって、そのパターンが傷の治りやサイトカイン濃度とどう関連するのかを調べたんだとか。
その結果、
- 全体的に要求・回避や相互回避といったネガティブなコミュニケーションパターンを多く使っている夫婦ほど、
- IL-6の濃度が高い
- 傷の治りが遅い
- ネガティブ感情が多い
- ポジティブ感情は少ない
- 話し合いの雰囲気や結果に不満が多かった
- 逆に、相互建設的なコミュニケーションパターンを多く使っている夫婦は、話し合いに対する評価が高かった
- また、夫婦のコミュニケーションパターンは、話し合い中の行動による影響を増幅していた。つまり、コミュニケーションパターンと話し合い中の行動がともにネガティブな場合には、傷の治りがさらに遅くなり、感情がさらにネガティブに傾き、話し合いへの評価がさらに悪くなった
- 男性に比べ、女性の方がこれらの影響が顕著だった
だったそう。つまり、慢性的・急性的な夫婦間のネガティブな行動やコミュニケーションが健康や人間関係にダメージをもたらす可能性があることが示されたわけですね。また、いくら楽しい話をしても普段のコミュニケーションパターンがよくないと、会話によるポジティブ感情の増加が小さかったというのも興味深いところかと。
もちろん因果関係がわからんやろ!とかいろいろ気になるところはあるかもしれないですけど、とりあえずカップル間のコミュニケーションは思っている以上に私たちの肉体的・精神的な健康と密接に関わってるっぽいよーってことで。
肥満で頭が悪くなる!って本当なんすか?
肥満で頭が悪くなる!ってのは以前から示唆されてましたけど、それって本当なの?みたいな内容が出ておりました。
こちらはアメリカの4つのコホートを用いて、思春期の認知能力と成人期の体格指数(BMI)との関係を検討した研究。この研究では、”sibling-comparison analysis”っていう分析手法が用いられているのが特徴的となっております。要するに、兄弟姉妹のBMIと認知能力を比較した分析でして、たしかに家庭の経済状況や遺伝、子育てのスタイル、親のIQ等様々な要因が絡んでくる可能性は十分あるでしょうから、家庭内で共有される因子をコントロールして認知能力とBMIの関連を分析するのは重要でしょうね。
分析の結果は、
- まず、家庭間で比較すると思春期の認知能力が25パーセンタイルから75パーセンタイルの上昇は、成人期のBMI0.95 kg/m2の低下と有意に関連していた
- しかし、家庭内で比較した場合、思春期の認知能力が25パーセンタイルから75パーセンタイルの上昇は、成人期のBMI0.06 kg/m2の低下としか関連せず、これは統計的に有意ではなかった。
って感じだったそう。家族間で見られた認知能力とBMIとの関係は、家庭内で見られなかった、つまり、同じ家庭で育った兄弟姉妹では、頭が良かろうが悪かろうが、BMIに大きな差はなかったぞ!ってわけですね。
まあこの研究をもって肥満と頭脳は無関係!とは言い切れませんけど(社会経済的地位や遺伝などが媒介して間接的に関わってくる可能性も小さくない)、太っている人は馬鹿だ!みたいな結論を導けるほど単純な話ではないぞーということで。
2型糖尿病の原因のほとんどが食事にある
食事が、2型糖尿病と強く関連していることは多くの人が認識しているでしょうが、最近の研究では「実際のところ、食事は2型糖尿病の発症にどのくらい関わってるの?」みたいなところを大規模なデータセットを用いて調べておりました。
具体的には、11種類の食事要因が直接的、間接的(体重を介した効果)に2型糖尿病の発症率とどう関連してくるのかを、184カ国の成人のデータから推定してます。
その結果、
- 2018年には、不適切な食事要因は、世界で1410万件の2型糖尿病新規発症例の原因となっていると推定された(これは全世界の新規発症例の70.3%(68.8~71.8%)に相当する)
- 2型糖尿病発症に対する影響が最も大きかったのは、以下の要素だった
- 全粒穀物摂取量が不十分なこと(26.1%(25.0~27.1%))
- 精白米や小麦摂取量が過剰なこと(24.6%(22.3~27.2%))
- 加工肉摂取量が過剰なこと(20.3%(18.3~23.5%))
- 地域別にみると、中央・東ヨーロッパと中央アジア(85.6%(83.4~87.7%))でその関連が顕著で、南アジア(55.4%(52.1~60.7%))ではその関連が最も小さかった
- 食事と2型糖尿病発症の関連は、一般的に男性より女性、高齢者より若年者で強く確認された
- 都市部居住者や高学歴者では、農村部居住者や低学歴者よりも食事に起因する2型糖尿病発症率上昇の影響が顕著だった
- 1990年と比較して、2018年には世界的な食事に起因する2型糖尿病発症件数が2.6%増加し(860万件増加)、世界地域や食事要因によってこれらの傾向に違いが見られました
といった感じ。都市化とか人口動態とかでも結構変わってくるみたいですけど、個人的には若者の方が食事による影響を受けやすいってのは印象的でしたね(もちろん発症総数は年齢を重ねた人の方が多いが)。もっかい食事を見直しておこう、、、