幸福とは「運」ではなく「戦略」だ!みたいな話『The Happiness Files』

『The Happiness Files: Insights on Work and Life』って本を読みました。著者はハーバード大の教授で『The Atlantic』の人気コラムニストでもあるアーサー・C・ブルックスさん。前作の『From Strength to Strength』も話題になってましたが、今回はさらに踏み込んで、人生とキャリアにおける「幸福」を科学的にハックしようぜ!という一冊になっております。

本書の核心を一言でいうと、「人生とは一つのスタートアップ企業であり、あなたは『幸福』という利益を最大化するためのCEOである」という、かなり経営的な視点の提言。

「幸せなんて人それぞれでしょ?」みたいなフワッとした話じゃなく、行動科学や神経科学、はたまたS&P500の株価データまで持ち出して、「幸福は設計可能である」と断言してるのが痛快なんですよね。

  • まず、ビジネス的な観点から。「社員の幸せなんて二の次だろ」と思っている経営者は、市場から退場することになる。投資会社Irrational Capitalの調査によると、従業員の幸福度スコアが高い企業の上位20%は、下位20%の企業に比べて、株価のパフォーマンスが約6%も高かったとのこと。(単なる給与や福利厚生の差だと2%くらいしか差が出ないらしいので、「内面的な幸福」がいかに企業の競争力、ひいては利益に直結してるかがわかるデータでしょう)
  • では、どうすればその「幸福」を最大化できるのか? ブルックス博士は、幸福を「満足=所有(Haves)÷ 欲望(Wants)」という方程式で定義している。これが非常に残酷かつ真理でして、現代人は分子の「所有(金、名声、フォロワー数)」を増やすことばかりに必死になる。でも、これだと「ヘドニック・トレッドミル(快楽の踏み車)」の罠にハマって、どれだけ手に入れても欲望(分母)が肥大化するから、いつまでたっても解(満足度)は大きくならない。
  • そこで提案されているのが、「逆バケットリスト」の作成。これは、死ぬまでにやりたいことを書くリストじゃなく、「自分が今、執着しているもの(昇進とか高級車とか)」を書き出して、「これを手に入れても永続的な幸せは来ない」と宣言して切り捨てるリストのこと。分母(欲望)を意図的に減らすことで、数理的に満足度を爆上げさせるという、「引き算の経営戦略」が推奨されている
  • キャリア中盤以降の戦略についての指摘も耳が痛い。人間の知能には、新しい問題を解決する「流動性知能(30〜40代でピーク)」と、経験に基づいた「結晶性知能(50代以降も伸びる)」の2種類がある。多くのハイパフォーマーが不幸になるのは、脳の機能が変化しているのに、いつまでも若手のような「キレッキレのプレイヤー」であろうとするから(これを「ストライバーの呪い」と呼ぶらしい)。チャールズ・ダーウィンのように「昔は天才だったのに…」と嘆いて晩年を過ごすか、バッハのように「教育者・長老」として第二の曲線に飛び移るか。我々は今すぐ、自分の役割定義を書き換える必要がある。
  • 人間関係にも「勝利の方程式」がある。ジョン・ゴットマンの研究によれば、良好な関係には「ポジティブなやり取り」と「ネガティブなやり取り」の比率が「5対1」以上である必要があるそう。これは職場でも家庭でも同じ。批判を1回するなら、賞賛や感謝を5回しないと関係は破綻する(ちなみに、ダメなチームはこの比率が「0.36対1」だったというデータもあるそうで、そりゃ組織も崩壊するわなぁ)
  • マネジメントの実践として面白いのが、「上司はチームランチを奢るべき。ただし参加するな」というアドバイス。データによると、上司と一緒にいる時間は、通勤や家事よりも「ネガティブな感情」を生みやすいらしい(悲しい現実……)。「風通しの良い職場」を作りたいなら、上司は金だけ出して、自分はその場から消えるのが正解。これが科学的に正しい「愛のある放置」ってやつかもしれない、と
  • 結局のところ、本書のメッセージは「Use things, love people(物を利用し、人を愛せ)」というマントラに集約される。不幸な人はこの逆、「Love things, use people(物を愛し、人を利用する)」をやってしまっている。人生というスタートアップの最終的なKPIは、銀行口座の残高(履歴書上の美徳)ではなく、葬式で誰に何を言われるか(弔辞の美徳)だという結論は、ベタだけど、科学的データを見た後だと妙に腹落ちしますねぇ

私たちは仕事のプロジェクトなら必死にKPIを設定し、リスクヘッジし、リソース配分を考えるのに、自分の幸福となると「まあ、そのうちなんとかなるっしょ」とか「とりあえず年収上がれば幸せっしょ」みたいな、あまりに杜撰な計画で動いている。もし人生が会社だとしたら、そんな経営方針じゃとっくに倒産してますよ、というメッセージはなかなか耳が痛いですね。

特に「欲望の分母を減らす」というアプローチは、成長至上主義に毒された我々には劇薬でしょう。「もっと成果を!もっと知識を!」とアクセルを踏み続けてきた足を、一度緩めて、「本当に必要なのは何か?」と引き算をする勇気。これは、ある種のアグレッシブな「諦め」の技術とも言えるかもしれません。

明日からできることとして、私はとりあえず「逆バケットリスト」を作ろうと思います。「〇〇賞を取りたい」とか「SNSでバズりたい」とか、自分の幸福にとって実はノイズでしかない欲望をリスト化して、ゴミ箱にダンクシュートする。

あと、部下や後輩がいる人は、来週のランチ代だけ渡して「俺は忙しいから」と席を外してあげるのもよいかもしれません。それが、データが示す「最高の上司」の振る舞いらしいので笑。

科学が示す幸福への道は、意外と地味で、でも確実に「効く」ものばかりです。感情のCEOとして、自分の人生を黒字化(幸福化)していきましょう!

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