前立腺がんは、世界的に見て非常に発症頻度が高いものであり、例えばアメリカでは、男性癌の中で罹患数が第一位、死亡数が第二位となっています。日本においても、前立腺がんはもっとも増加している癌の一つであり、ここ20年で10倍近くの罹患者数になっております。2017年には、男性のがんの中で最も罹患者数の多いものとなりました。
その原因は、食の欧米化、高齢化、PSA検査の普及などが主張されていますが、加齢等はどうしようもないので、そのリスクを自力で低下させる方法の一つとして食の改善が考えられます。
日本人を対象にしたケースコントローススタディでは、日本の伝統的な食事が前立腺がんのリスクを軽減する可能性を示唆しています。
サーベイでは、59歳から73歳までの140人の患者を対象にして行われました。そのうち、ステージⅠが2人、ステージⅡが86人、ステージⅢが36人、ステージⅣが16人だったそう。彼らが前立腺がんを発症するまで5年間の日常的な食事習慣を調べて、それをコントロール群を比較しました。
これによって、食事習慣と前立腺がんの関係性を調べようとしたわけです。
その結果は以下のようになりました。(喫煙習慣や、総エネルギー量は調整したもの)
- 魚、大豆、豆腐、納豆を多く食していた人は前立腺がんのリスクが低下していた。
- 特に、魚と納豆を食していた人とリスクの軽減は、線形の関係を示していた。
- 肉を多く食していた人は、リスクが増加していた。
- 卵や牛乳、野菜、アルコール、コーヒーはリスクの増減と関係していなかった。
- 総摂取エネルギー量、米はリスクの緩やかな増加と関係がみられた。
- 緑茶は緩やかなリスクの減少との関係がみられた。
ということで、大豆や魚が多く含まれる日本食の、リスクの軽減との関係性が示唆される結果となっております。研究チームは、大豆の効果について、イソフラボンが関係しているのではないかと想定しています。イソフラボンは、認知機能の改善等でも登場する有能なフラボノイドの一種として有名ですよね。豆腐や納豆には、そのイソフラボンが豊富に含まれているわけです。
もっとも、野菜やアルコールの関係については他の研究では関係性が優位に見られたりしているので、野菜は食べなくてよい、アルコールは好きなだけ飲んでよい、ということにはならないでしょう。たとえ前立腺がんのリスクと関係がなかったとしても他の健康リスク、認知機能との関係性はほぼ間違いないでしょうから。
研究チームも以下のようにコメントしています。
(野菜とリスクの関係について)野菜が前立腺がんのリスクの軽減に影響があるのか、結論を導くに足りる十分なエビデンスがない。(中略)(アルコールとの関係について、)対象者が少なすぎて、アルコールの関係について調査することができなかった。
ほかにもいろいろバイアスの可能性とか、因果関係の問題とかは残りましょうが、魚や大豆は、ほかにも効能が期待できますし、欧米的な食生活を続けるリスクよりはベネフィットが大きいのではないでしょうか。実践する価値はありそうです。
個人的には、魚や大豆は好物なので、より一層食事に取り入れていきたいと思っております。鯖や鮭等がおいしい季節になってきましたので皆さんもよければお試しあれ。
それではまた。
References
- Tomoko Sonoda et al. (2004) "A case‐control study of diet and prostate cancer in Japan: possible protective effect of traditional Japanese diet"
- Prostate Cancer, American Cancer Society.
- Guocan Wang et al. (2018) "Genetics and biology of prostate cancer"