「健康に長生きしたけりゃ食事に気をつけろ!」ってのはもはや耳タコでしょう。が、そうはいっても「じゃあ何をどのくらい食べればいいの?」って問題に関する結論を出すのは容易ではないわけで、どうにも判断に困ってしまうこともしばしばありましょう。
そんななかで、German Institute of Human Nutrition Potsdam-Rehbrueckeなどの研究チームによるメタ分析(R)では、この点に関してシンプルかつ包括的に調べてくれていて、参考になります。
何をどのくらい食べれば寿命が延びるのか?
これは、「何をどのくらい食べれば総死亡リスクが上がるか?下がるか?」って問題を調べた266件の先行研究をがっつりまとめたメタ分析になっています。
分析に含まれた研究はすべてバイアスのリスクは低め(喫煙、運動、BMIが調整済み)となっておりまして、食べ物のカテゴリによってエビデンスの質にばらつきはあるものの、ある程度信頼がおけそうであります。
というわけで、その結果わかったことを簡単に列挙していきます。
寿命が延びる食べ物
まずは、食べると死亡リスクが低減する食べ物について確認してみるとこんな感じ。
- 全粒穀物:全粒穀物を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが12%低く、1日の摂取量が30g増えるごとに死亡リスクが8%低下する。この関係は、1日100gくらいまで続いて、死亡リスクは25%低下する。エビデンスの質は高め
- 野菜:野菜を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが7%低く、1日の摂取量が100g増えるごとに死亡リスクが4%低下する。この関係は、1日300gくらいまで続いて、死亡リスクは11%低下する。エビデンスの質は低め
- フルーツ:フルーツを多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが9%低く、1日の摂取量が100g増えるごとに死亡リスクが6%低下する。この関係は、1日250~300gくらいまで続いて、死亡リスクは10%程度低下する。エビデンスの質は低め
- ナッツ:ナッツを多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが20%低く、1日の摂取量が28g増えるごとに死亡リスクが24%低下する。この関係は、1日15~20gくらいまで続いて、死亡リスクは17%程度低下する。エビデンスの質は中程度
- 豆類:豆を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが4%低く、1日の摂取量が50g増えるごとに死亡リスクが4%低下する(有意ではない)。この関係は、1日150gくらいまで続いて、死亡リスクは16%低下する。エビデンスの質は中程度
- 魚:魚を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが5%低く、1日の摂取量が100g増えるごとに死亡リスクが7%低下する。この関係は、1日200gくらいまで続いて、死亡リスクは10%低下する。エビデンスの質は中程度
寿命が縮む食べ物
続いて、食べると死亡リスクが上昇してしまう食べ物について確認してみますと、
- レッドミート:レッドミートを多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが10%高く、1日の摂取量が100g増えるごとに死亡リスクが10%上昇する。エビデンスの質は中程度
- 加工肉:加工肉を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが21%高く、1日の摂取量が50g増えるごとに死亡リスクが23%上昇する。1日200gも食べれば、死亡リスクは60%程度上昇する。エビデンスの質は中程度
- 砂糖入り飲料:砂糖入り飲料は全体的には有意な関係はなかったが、1日に飲む量が250mLくらいまで増えれば、死亡リスクは7%程度上昇する。エビデンスの質は低め
- 卵:卵を多く食べる人は、少ない人に比べて死亡リスクが6%高く、1日の摂取量が50g増えるごとに死亡リスクが15%上昇する。1日60gも食べれば、死亡リスクは10%程度上昇する。ただし、エビデンスの質は極めて低い
- 牛乳:適度な量なら問題ないが、1日750gを超えたあたりから15%程度の死亡リスクの上昇との関連が見られた。エビデンスの質は中程度
って感じだったそう。そのほか、「精製穀物」に関しては摂取量と死亡リスクとの間には有意な関係は確認されなかったらしい。
結局、何をどのくらい食べればいいの?
これらの結果を総合すると、1日当たり、
- 全粒穀物を90g(RR=0.79)、野菜を240g(RR=0.89)、フルーツを240g(RR=0.90)、ナッツを28g(RR=0.85)、豆を100g(RR=0.90)、魚を200g(RR=0.90)、とった場合に最も死亡リスクが低下する(合計56%)
- 逆に、レッドミートを170g(RR=1.35)、加工肉を120g(RR=1.35)、卵を55g(RR=1.07)、砂糖入り飲料を250mL(RR=1.07)とった場合に最も死亡リスクが上昇する(約2倍)。逆に、これらを飲み食いしなければ、総死亡リスクが52%低下する
だったそう。てなわけで、とにかく、
- 野菜、フルーツ、ナッツ、豆類、魚を増やす
- レッドミート、加工肉、(卵、)砂糖入り飲料を減らす
って感じのルールなら、比較的わかりやすいんじゃないでしょうか。結局、地中海式とかに近い食生活に近づく感じっすね。
このような食生活をしておけば、
- 食物繊維
- ミネラル
- 微量元素
- ビタミン
- カロテノイド
- ポリフェノール
- アルキルレソルシノール
- オメガ3脂肪酸
なんかが豊富に取れて、一方で、
- 炎症性や酸化を誘発、促進する物質
- 発がん性物質
等が減る結果として、肉体のダメージを防げるというのは想像に難くないでしょう。
ただ、このメタ分析は2017年のものでして、最近のデータに照らすとちょっと違うんじゃない?ってところもところどころあったりするんですが、大枠としては他のメタ分析の結果とも一致していていい感じ。
最後に、研究チームのコメントを確認しておくと、
適度な量の全粒穀物、野菜、果物、ナッツ、豆類、魚を摂り、レッドミート、加工肉、砂糖入り飲料の消費量を減らせば、いつもリスクの高い食生活をしている人に比べて最大80%程度まで早期死亡リスクを減らすことができる。
とのこと。体にいいものを食べて、体に悪いものは食卓から排除するだけで、死亡リスクをかなり下げられるってわけですね。
まあカテゴリーわけもざっくりしたものですんで、例えば「野菜のうちのどれをたべるべき?」みたいな問題はまた別の機会に紹介するとして(ご要望があれば)、とりあえず目安のガイドラインとして参考にしてみてください。
質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!