「クリエイティブな分野で成功するのが非常に難しい!」ってことに異論を抱く人は少ないと思いますが、そんな分野で結果を残す人たちのキャリアにはなんか共通点があるんじゃない?それを真似すれば成功率を上げられるんじゃない?みたいな論文(R)が面白いです。
芸術、文化、科学の分野で成功する人に共通するたった一つの法則
これはノースウェスタン大学などの研究で、芸術家、映画監督、科学者のキャリアに関するデータを大量に集めて、「ホットストリーク」を経験した人の共通点を探したんだそう。
「ホットストリーク」ってのは、その分野で連続してヒットを生み出せるような状態のことで、ホットストリークの前とその最中に人はどんな行動をとっているのかを分析したんですな。
具体的には、
- 2128人のアーティストの80万件以上の作品と画風
- 4337人の映画監督の約8万件の作品と映画のスタイル、ジャンル
- 20,040人の科学者の論文とリサーチトピック
みたいなのを集めて、ディープラーニングとネットワークサイエンスの手法を用いて分析しております。
「ホットストリーク」を見極めるに際しては、それぞれオークション価格、IMDBのレート、論文引用数みたいなのをもとに作品や論文が評価されております。「芸術には数字で測れない価値がある!」ってな異論もありましょうが、そうすると相当複雑になっちゃいますし、まあこれだけでも十分に参考になる内容でしょう。
その結果、3つの分野すべてにおいて「ホットストリーク」を経験する人には以下のような1つの「法則」が見つかりました。
- 「探索」:ホットストリークの直前まで、様々な分野に手を出していた
- 「開発」:ホットストリークに突入すると、目の前の分野にとことん集中していた
そんなこと誰でもやってる!って思う人もいるかもしれませんが、彼らはこの傾向が著しかったんだったそう。つまり、異常なまでにあらゆるスタイルやアイデアを実験して知恵を広げ、これと決めたら異常なまでに没頭するんだ、と。
論文中では、例として映画監督のピーター・ピータージャクソンの例なんかが挙げられておりました。彼の代表作としては「ロード・オブ・ザ・リング」が有名ですが、その直前までは伝記ものやホラー、コメディーなどにも手を出していたんだそう。「RANGE」で取り上げられていた、テニスの前にバスケやクリケット等にも精を出していたというフェデラーの話を思い出しましたね。
さらにこの点に関して補足事項を上げておくと、
- 「探索」と「開発」のどちらかだけではホットストリークを経験する確率はそこまで上がらなかった
- 「探索」→「開発」の順番で取り組んだ場合のみホットストリークにつながっていた
- 以上の結果は、3つの分野で全て確認され、トピックや分析手法、キャリアのどのステージにいるかによらず、またホットストリークを以前に経験したことがある人でも同様だった
だったそう。一般にはホットストリークは経験するとしても人生で一回のことが多いといわれているんですが、2度以上経験する人も、1度目と同様のルートをたどっているんだ、と。なかなか面白いっすねぇ。
研究チーム曰く、
リスクを冒して知見を広げる戦略である「探索」が画期的なアイデアを発見する可能性を高め、それに続く「開発」が焦点となる分野に集中して知識と能力を高め、発見をさらに発展させることを可能にするのかもしれない。
重要なのは、探索と開発の両方の要素が必要だということだ。これは、すべての探索が身を結ぶわけではなく、有望なアイデアがない場合の探索はそれほど生産的ではないという考えを裏付けるものでもある。一方で、「探索」と「開発」を繰り返すことで、新たな知見を集中的にアジェンダに組み込むことができ、インパクトのある成果が生まれやすくなる可能性がある。
とのこと。このプロセスをたどれば必ずしも成功できる保証はないけれど、「開発」の前に「探索」を、それぞれ徹底して行えば、成功の確率をグンと高められる可能性はある、ってことですな。
ホットストリークの人数とテーマ
そのほかにも「ホットストリーク」に関連した面白い結果が得られてまして、簡単に紹介しておきます。
- ホットストリークの直前まではチームの人数が少なく、ホットストリークが始まるとチームの人数が増える
- ホットストリークのテーマは、直前の「探索」の期間に触れていた、または最も成果が出ていたトピック等であることは少なく、むしろ今までの知見を組み合わせることで新しい価値を創造することが多かった
だったそう。ホットストリークの直前までは少人数で独自のピラミッドを構築し、いざホットストリークが始まれば、ピラミッドの中からつまみ食いして新しいアイデアを生み出すんだ、と。
以上が結果で、効果量も中程度ですし、今回の調査には含まれなかった多くの職業でも通じるところがあるんじゃないかなーとか思いました。
すでに同様のプロセスを踏んでいる人は大勢いるような気もしましたが、トップで成功する人はそのプロセスが「異常」なほどだったってのが今回の論文の教訓ですかねー。そんなわけで繰り返しになりますが、クリエイティブな分野で成功するには、
- 金にありつくまでは、徹底的に周りを掘り続ける
- 1つに決めたら周りには目もくれず、一点集中で掘り進める
ってことを頭に置いといていただくといいんじゃないでしょうか。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!