「大気汚染がいろいろよくない影響を心身に及ぼす!」みたいな話は当ブロブでもたびたび紹介しております.
大気汚染のからだに及ぼす害と言えば,肺がんや呼吸器疾患のようなものがまず思い浮かぶでしょう.このような影響を最小限にするために,今回のパンデミック後もマスクを付け続ける人も多いかもしれません.
そのほかにも,最近では,「皮膚のダメージの原因にもなるかも?」ってのが懸念されております.大気汚染物質濃度が高い地域の人ほど肌の老化が進んでいる!みたいな報告も結構あるんですよね.
具体的なメカニズムとしては,以下のようなプロセス考えられていたりします.
- 大気汚染物質が皮膚に付着
- 皮膚内で活性酸素が増加
- 細胞中のDNAやタンパク質にダメージ
- アトピー性皮膚炎を発症したり,しわやしみが増える
そのほかにも,微粒金属が皮膚に触れることによる金属アレルギーが起こる場合もあって結構厄介なんですよね.
そんなところで,「実際PM2.5やPM10でどのくらい肌にダメージがあるの?」みたいな研究(R)についてメモ.
これは,過去に行われた「大気汚染と皮膚へのダメージ」に関するコホート研究から13件を抜き出して計72,000人分のデータをまとめたメタ分析.
皮膚へのダメージの中身としては,アトピー性皮膚炎(AD)や,湿疹,皮膚の老化なんかが含まれておりました.
対象者は2~30歳と若めになっておりまして,特に,学生やお子さんを持つ方にとって参考になりそうです.
それで,どんなことがわかったかと言いますと,
- PM10の曝露による全体的な皮膚へのダメージの相対リスク(オッズ比)は0.99(0.89-1.11), PM2.5による相対リスクは1.04(0.96-1.12)で,研究間の異質性は低かった
- ADに絞ってみると,PM10による相対リスクは0.96(0.83-1.11), PM2.5による相対リスクは1.05(0.95-1.16)だった
- 短期間の影響を見ると,皮膚のダメージのリスクは,PM10が10μg/m3増えるごとに1.01%(0.08-2.05)上がり,PM2.5が10μg/m3増えるごとに,1.60%(0.45-2.82)上がる.
- 長期的には,PM10では47.09μg/m3,PM2.5では26.04μg/m3以上の濃度になると,皮膚にダメージを及ぼし始める
みたいになります.こうしてみると,そこまで大きな影響はないかもだけど,PM(特に2.5)の濃度が高くなると確かに皮膚へのダメージは及んでいそうだなーって感じですかね.研究間のばらつきの問題はちょっと気になりますが,PM2.5による子供のADリスクなんかは特に注意したほうがいいかも.
そんなわけで,特に,子供の肌は敏感でして空気中の微粒子の影響を受けやすいんで,屋内でも屋外でも,PMだけでなく,たばこの煙や,NOx,SOxなどにも注意したほうがよさそう,ってことを改めて感じました.
対策としては,どのくらいダメージを軽減できるかはわかりませんが,外出時には日焼け止め等を塗ることで大気汚染物質の皮膚への接触を最小限にするといいかもしれません.
もっとも,日焼け止めだと時間が経てば防御が薄くなってしまうし,そもそも粒子自体が小さいんで,どこまで侵入を防げるのかはわかりません.とはいえ,皮膚の防御には紫外線対策は必須ですから,塗っておいて損はないでしょう.
ほかには,抗酸化物質を適度に取る,ストレス対策もしっかりする,みたいに活性酸素を蓄積しないような工夫も有効かもですね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!