昨今,体重の減少効果をうたったサプリやセラピーは世の中にあふれておりまして,マーケットデータの調査によれば,アメリカでは年間610億ドルものお金がダイエット商品に支払われているそう.
しかも,最近では,「○○大学の研究によって効果が実証されました!」みたいな商品も結構あったりするわけです.
確かに有名な大学の名前を出されると,「本当に効果あるのかも?」とか信じちゃう気持ちもわかります.もっとも,サプリの会社がスポンサーになっていたり,実験デザインが不十分だったりして,実際には「科学的に効果がある!とは言えないんじゃない?」みたいなものも多いんですよね.
で,新しい系統的レビュー(R)では,「ダイエットサプリやセラピーの効果を信じていいの?」って点をがっつり調べてくれておりました.
まずは結論から言っちゃうと,
- ダイエットサプリやセラピーによるダイエット効果のエビデンスの質は概して低い!
みたいになります.論文になっていないサプリとかは論外として,研究を行って論文として発表されているサプリとかであっても,体重減少の効果は安易に信頼しない方がよさげ,と.
具体的にどんなレビューだったかと言いますと,まずは過去にダイエットサプリやセラピーの効果を調べた研究の中から,315のRCTを含む1,743件をピックアップ.実験の対象者は18歳以上でBMIが25kg/m2以上の人たちで,分析に含まれたサプリやセラピーは以下の14種類.
- 鍼治療
- カルシウム,ビタミンD
- キトサン
- チョコレート,ココア
- クロム
- エフェドラ,カフェイン
- ガルシニア
- 緑茶
- グアーガム
- 共役リノール酸
- マインドボディ(マインドフルネスとかマッサージとか)
- インゲン豆
- フェニルプロピルアミン
- ピルビン酸
どれもダイエット効果がある!みたいにうたわれるものばかりですな.要するに,これらを飲んだり,行ったりした場合のBMIや体重,体脂肪の変化をチェックした研究のエビデンスの質を分析したわけです.
でもって,どんなことがわかったかと言いますと,
- 315件のRCTのうち,バイアスのリスクが低く,十分なエビデンスの質を担保していたのは52件(16.5%)だった
- そのうち,統計的に有意な体重減少の効果が認められたのは16件だった
- 効果が認められた16件のサプリやセラピーは特定の種類のものではなく,複数にばらけていた
だったそう.エビデンスの質っていうのは,
- サンプルサイズの大きさ
- 盲検化の有無
- 参加者のその他の習慣
- 介入期間
といった要素を総合考慮したもの.つまり,そもそも厳密な実験デザインの下で行われた研究が16.5%しかなく,その中でダイエット効果があるかもしれないのが3分の1くらいだった,と.
しかも,その3分の1のサプリ等にも本当にダイエット効果があるのかはわかりません.なんせ,とりあえずバイアスの可能性は低い実験で,対照群と有意な差は出たってだけで,研究間での結果はバラバラだったんで.
研究チーム曰く,
研究は,潜在的なコマーシャルバイアスから独立しているべきだが,私たちの発見は,現在これが実現できていないことを示唆している.
とのこと.どうしてもサプリの企業とかからの支援の下行われている以上,ポジティブな効果が出るように実験が行われてしまうわけですが,ここまでおざなりになっているとは….ちょっと残念です.
しかも,ダイエットサプリとかって,体重減少どころか死亡原因になっていたなんて例も報告されていたりして,効果がないどころが寿命を縮めてしまう可能性すらあるんですよね.
そんなわけで,「ダイエット効果が科学的に実証されました!」という文句には引き続き要注意,ということで.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!