ここ数年,かのGoogleとかも重要視してるってことで注目を集めているのが「知的謙遜」っていうパーソナリティであります.
ご存じの通り「知的謙遜」っていうのは,ざっくりいえば「自分の知性の限界を正確に認識している状態」のことでして,要はソクラテス氏の言う「無知の知」ですね.
知的謙遜のレベルが高い人のほうが,「自分には知らないことがまだまだある」って強く実感するんで,学習に対して前向きになり,成長のスピードが速くなると考えられるんですな.
そんなところでペパーダイン大学などの研究(R)では,「知的謙遜のレベルが高い人はどんな特徴があるの?」みたいな点を調べてくれていて参考になります.
この研究は5つの実験で構成されてまして,合計1,189人の参加者を対象に,知的謙遜と様々な特徴の関係性を調べたもの.ここで調べられた様々な特徴ってのは,以下のようなポイント.
- 認知能力,GPA,全般的な知識量
- メタ認知
- 思考スタイル,性格特性,ゴールの設定方法
これらのレベルによって知的謙遜の高低にどんな違いが出るのかを見たわけですね.一応,この実験における「知的謙遜」の定義は,
- 自分の知識が必ずしも正確ではないということを恐れずに受け入れられる意識
といったところ.今の自分の知識が必ずしも絶対じゃない,ってことを十分に理解している人ってことですな.
「そんなん当然やろ!」っていう人もいるかもしれませんが,人間には「自分は平均よりは上だ!」って思いこむバイアスがあるせいで,意外と知的謙遜の意識を常に持ち続けるのは難しかったりするんですよね.
さて,以上の研究で何がわかったかと言いますと,知的謙遜が高い人ほど,
- 全般的な知識が豊富だが,認知能力とは相関がなく,GPAはわずかに低い.
- 自分が知らない知識については話さず,自分の認知能力を正確に把握,またはやや過小評価している.
- 反省的思考,知識の必要性,知的なエンゲージメント,好奇心,知識に対するオープン態度,偏見のない思考,学習のモチベーションのレベルが高かった
- 自分と意見が異なる相手でも容易に断罪をしない
といった傾向があったそうな.つまり,知的謙遜レベルが高い人は,
- 自分の能力を正確に把握
- あらゆるソースから積極的に学ぼうという姿勢を保持
- 内容を吟味して事実に基づく判断を下す
といったプロセスを繰り返すことで知識が増えていく,っていうわけっすな.
情報過多の現代において,いろんな情報源から情報を仕入れて,自分の頭で多角的に考えて知識をアップデートしていくべし!ってことはよく言われます.が,そんな当たり前のことを当たり前に実践していくためにも「知的謙遜」ってはかなり重要な要素なのかもしれませんね.
研究チーム曰く,
この論文の主な焦点は,知的謙遜が知識の習得をどう促進しているのかという点だったが,この結果は,知識を得ることが知的謙遜を向上させることも示唆している.
(中略)
高度な知識に触れることによって,知識の複雑性への理解が高まり,その結果,人は自分の知識の限界を実感する,つまり知的謙遜が高まるということを示唆している.
とのこと.知的謙遜のレベル高い人ほど知識の習得がうまいというだけでなく,知識を習得する過程で知的謙遜が磨かれていくかもしれない,と.知識の獲得と知的謙遜の向上の正のループになっていくわけですな.
ってことで,知識を習得したい方は知的謙遜を,知的謙遜を磨きたい方は知識の習得を意識しとくといい感じかもしれません.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!