「なんだかおなかが弱いんだよな…」って人にありがちなのが過敏性腸症候群,いわゆるIBS. 日本では全人口の10~15%くらいが罹患しているんじゃないか?みたいに言われていたりします.IBSの症状としては,
- おなかが痛い……
- 便秘や下痢が繰り返し起きる……
- おなかが膨れている気がする……
- おなかにガスがたまってる……
みたいな問題に悩まされることになります.普段の生活や満足度にも相当の影響が生じてしまうんですよね.
とはいってもまだはっきりした原因すらわかっていないのがIBSの難しいところ.ストレスやホルモンバラスの変化,高カロリー食や高脂肪食などが原因ともいわれていたりします.また,解決策としても認知行動療法などのメンタル面からのケアと食事制限などの食事面からのアプローチが行われていたりします.何かと難しい症状なわけです.
さらにIBSの患者の最大60%が何らかの心理的な問題を抱えているといわれていたりもするんですよ.で,最近見た論文(R)では,「IBSってメンタルの不調と関係あるの?」みたいな問題を調べてくれていました.
これはIBSと診断された人と健康な人の比較実験10件を集めたメタ分析で,885人のIBS患者と1,384人の健康な人のデータをまとめてくれております.で,「IBSの状態が不安やうつの症状に関係しているのか?」ってポイントが調べられました.
では,以下に結論です.
- 全体的にIBS患者はコントロール群に比べて不安やうつのレベルが高かった(それぞれSMD=0.76, 0.80).
- サブタイプ別にみると,IBS-D(下痢型)は不安,うつともに上と同様の関係がみられ,IBS-C(便秘型)は鬱レベルとの関係だけで有意な関係がみられた.
- その他の型も不安やうつレベルが高い傾向がみられたが,データ量が少なくてはっきりしない.
てことで全体的にIBSの人たちは健康な人たちに比べて不安やうつのレベルが高くて,おそらく「型を問わず,IBSはメンタルに悪影響を及ぼすかも!」と言ってよさそうであります.SMDのレベルも結構高いですし.
もちろん相関関係に過ぎないんで,IBSがメンタルを悪くしているのか,メンタルが悪くなる原因を持っている人がIBSになるのかはわかりません.もっとも,IBSの予防,症状の緩和をすることによってメンタルへの悪影響も十分抑えられる可能性があると思われます.
研究チーム曰く,
IBS患者の不安やうつの症状は体型的にチェックされ,治療されるべきである.心理的な要素は症状の程度,持続性,治療をすべきかの決定,治療の効果を見るための重要なモデレーターになるのだから.
とのこと.つまり,IBSとメンタルの状態は強い関連性がみられるってことで,ちゃんと向き合う必要があるってことですな.
我々としても腸内の環境を健康に保つと同時にメンタルのケアをしておくことがIBSの予防や症状の緩和のために大事なのかもしれませんね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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