「親切」は人のためになるのはもちろんのこと,自分のためにも多くの面でメリットがあることがわかっていて,例えば,
- 生活や仕事の満足度が上がる!
- 仕事や学校でのパフォーマンスが向上する!
- モテる!
- 寿命が延びる!
みたいなデータが出ていたりします.あらゆる方面で自分に大きなメリットが跳ね返ってくるんですよね.そんな親切なんですが,さらに人に親切をするモチベーションをあげてくれるような新しいデータ(R)が出ておりました.
それは,ネットを使う上で超大事!と言われて久しい「メディアリテラシー」です.「親切をすることで,メディアリテラシーが向上するんじゃない?」みたいなことが調べられたのです.確かに親切の気持ちを育てることで他者に対する思いやりとかが増える結果,メディアを介する場合においても自分の利益だけを追求せずに適切な行動をとりやすくなる,と考えるのは難くないと思います.
これは香港大学等の研究で,香港の11歳から13歳の女子学生300人が対象とされていて,親切を促すような短いレクチャーと,エクササイズを通じて,以下の点にどんな変化が生じるかが調べられました.
- 自尊感情
- 自己効力感
- 機能的なコンサンプション(「メディアを通じて必要な情報を探すツールの使い方を知っている」とか)
- 批判的なコンサンプション(「複数のメディアにまたがって,情報やニュースを比較することができる」とか)
- 機能的なプロサンプション(「メディアの内容を発達させるために必要なソフトウェアを使うことができる」とか)
- 批判的なプロサプション(「法的,倫理的なルールにのっとったメディアコンテンツを作ることは大事だと思う」とか)
上2つは一般的な心理状態を調査するのに一般的なやつですね.下4つがメディアリテラシーについての項目になっていて,そのうち,さらに,メディアを受動的に使う受けての側から評価する「コンサンプション」と,能動的に自ら創造していく「プロサンプション」にさらに分かれています.
自尊感情や自己効力感は上がりそうな感じがしますが,メディアリテラシーに関してはどうなんでしょう.その結果はというと,
親切の介入によって,
- 自尊感情が向上した.
- 自己効力感が向上した.
- 批判的プロサンプションが向上した.
- 機能的,批判的コンサンプションは変化しなかった.
- 機能的プロサンプションも変化しなかった.
という感じになったそう.要するに,親切について学ぶと,自信,自己効力感が向上した.また,一般的にメディアリテラシーの文脈で使われるような,「正しく情報を取捨選択しよう!」みたいな要素は変化しなかったけれど,ルールは守って,自分勝手な使い方を回避する,というような意識は強まった,という感じでしょうか.
やっぱりほかのコンサンプションの要素とかはそのための訓練が別途必要なんでしょうかね.確かにそれらは「使い方」とかの話ですから,「親切」を修得しても特に変化が生じないのは,当然っちゃ当然っすね.
批判的プロサンプションが向上した点について研究チームは,
先行研究においてメディアリテラシーは社会的なプロセスで,それは自身と関連していることの必要性や,望ましいモチベーションの機能を満足させる機会と関連していることが示されているように,親切がオンラインでの責任ある社会的な振る舞いをする能力を高める可能性があることは議論に値する.
とのこと.つまり,親切によって自分が社会的な存在であって,オンライン上であっても果たすべき責任を全うしなければならないという意識が強まったんじゃね?ということです.
また,今回の調査全体を振り返って,
自信や自己効力感のための親切のカリキュラムがもつポジティブな効果が,さまざまな場面において心理的な親切心を鍛える恩恵に関するエビデンスを強化している.メディアリテラシーの社会的に生じた特徴のおかげで,親切のようなポジティブな徳を伸ばすことがメディアの要素の責任ある創造の向上につながるかもしれない.
とコメントしております.
もちろん男性や大人,日本でも全く同じだけの効果が生じるかはわかりませんが,親切はメディアリテラシーのある面でもポジティブな効果をもたらすかも,ということで,一日一善から,小さな親切から,日常に取り入れてみてはいかがでしょうか.
参考になれば幸いです.それではまた.
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