私はラーメンが大好きです。でも、健康面を考えたらなるべく控えるべきということはわかっています。なので、最も健康的なラーメンを作るためにいろいろと調べ、試行錯誤しているここ最近。
調べている途中で、日本の都道府県別で見た、脳卒中と、ラーメン店の分布の関係性を調べた自治医科大学の面白い研究を見つけたのでメモ。
そもそも脳卒中とは何か、ということの確認を簡単にしておくと、脳内の血管が破れたり、詰まったりすることによって、脳内の血液循環に異常が発生することによってさまざまな症状を発症する病気です。その原因としては、遺伝的要因だけでなく、暴飲暴食などの生活習慣、ストレス、そして一番影響が強いと考えられているのが高血圧です。命に係わる重大な病気であり、なるだけなりたくないのは言うまでもありません。
脳卒中は世界的に見ても重大な病気で、食生活でいえば、地中海式などによってそのリスクの軽減が主張されていたりします。そして日本食も、循環器系の病気による死亡リスクを軽減するといわれていたりしますが、実際に日本では、脳卒中の罹患者数、死亡数はいまだ多いままです。
さらに、東日本のほうが西日本に比して脳卒中の死亡数が高い、という状況を踏まえて、文化の違い、食の好みの違いが原因で、そのような差異が生じているのではないかと研究チームは考えたわけです。そこで、飲食店の種類別の分布に目を向けたのです。
研究では、都道府県別の飲食店の種類別の分布(ラーメン店、ファストフード店、フレンチ又はイタリアン、うどん、そば店)と、脳卒中、急性心筋梗塞による死亡率の関係を調べました。
その結果、ラーメン店の分布と男女別の脳卒中の死亡率は、下図の通りになりました。
上図では、A、Bはそれぞれ順に男性、女性の年齢を調整した脳卒中による死亡率を、C,Dはそれぞれ男性、女性の人口当たりのラーメン店の分布を表しています。
この図から以下の点が読み取れます。
- 脳卒中による死亡率は、男女ともに、東北、北関東、南九州で高く、近畿や南関東では低い。
- その傾向はおよそラーメン店の分布と一致している。
この相関は、男性に関してはr=0.594, 女性に関してはr=0.625であって、他の種類の店舗と比較しても圧倒的に高いことがわかりました(例えば、次に高かったうどん、そば屋は、r=0.075, 0.072, ファストフード店との相関はr=-0.127, -0.101)。
この数値を見てもやはりラーメン店の分布との相関がいかに高いかが男女ともに、よくわかります。また、私の感覚的に東京や神奈川、大阪などの都市部では、より健康的な食事を意識したお店が多い気がする一方、東北とかでは飲食店総数に対するラーメン店の数が多い気はしていて、その感覚とも一致しています。
この結果を受けて研究チームは以下のようにコメントしています。
低い気温、高い気温が脳卒中の死亡率を高めることは今までも報告されていたがそのメカニズムははっきりしていない。私たちの発見は、食事に対する好みが地域別の脳卒中の死亡率の違いを説明するかもしれない。
もっとも、この研究にはまだ不明瞭なところもいくつかありまして、ラーメンの消費量が脳卒中の死亡率を高めているかはわからない点、ラーメンといっても色々種類がある点、ラーメン店とはいえど、ほかにも品ぞろえがある点などがあげられます。
以上を踏まえると、因果関係こそ明らかではないものの、ラーメン店の分布と脳卒中の死亡率の相関が強く認められるのは事実です。この結果から、ラーメン店が少ない地域に引っ越そうみたいに考える人はいないと思いますし、その必要もないとは思いますが、近くにラーメン店がいっぱいあると、自然と暖簾をくぐってしまうことが多くなってしまうことは容易に想像できます。
ってことで、よくラーメン店の前を通りかかったりとか、見かける機会が多いような人は、無意識に入店してしまい、食べる量が増えてしまうことが考えられますので、そこんとこを頭の片隅においておくといいかもしれません。
それではまた。
References
- Kosuke Matsuzono et al. 2019, "Ramen restaurant prevalence is associated with stroke mortality in Japan: an ecological study"