「宿題って意味あるの?」みたいな議論は昔から盛んにおこなわれているわけです.科学的に見ても,
- 宿題をする時間が多くても成績は変わらない!むしろ成績が下がるケースもある!
みたいなデータがあったかと思えば,
- 宿題をする時間,頻度が多ければ成績はちゃんと上がる!その後の収入や役職にも影響する!
みたいなデータもあって,謎なポイントが多かったりします.なので,個人的には,一概に「宿題は善だ!悪だ!」と言い切ることはできないんじゃないのかなーとか思っていたりします.
そんなところで,オビエド大学などの研究(R)は,ナイスな知見を与えてくれております.
この研究では,スペインの中学2年生の子供26,543人を933の学校から集めて,各生徒に対して以下のポイントを調べてました.
- テストの成績(対象科目はスペイン語,数学,理科,公民)
- 宿題にかける時間
ここまでは一般的な宿題の研究と同じですが,この研究ではさらに,学校別に生徒が宿題にかける時間の平均を算出して,そのばらつきの大きさまでチェックしたとのこと.要するに,宿題にかける時間だけでなく,宿題の「量」も成績に影響しているんじゃないの?って考えたわけですね.
で,以下に結論です.
- 個人レベルでは,宿題にかける時間が短いほど成績が高かった
- 一方,学校レベルでは,宿題にかける時間が長いほど成績が高かった
- 宿題の量(宿題にかける時間を学校単位で見たときの平均時間)が多い学校ほど,宿題にかける時間,成績のばらつきが大きかった
って感じで,当然といえば当然,といった感じ.宿題が多い学校のほうが生徒の成績が高いけど,宿題をする時間が少ない方が成績が高い,というパラドックス状態になっているわけっすね.
特に,最後のばらつきの問題が懸念されておりまして,
- 1日60分程度の宿題を出された場合,早い生徒は宿題を終わらせるのに週に4時間かけるのに対して,遅い生徒は週に10時間かかっており,成績も8.3%程度低かった
- 1日120分の宿題を出された場合には,早い生徒は週に7.5時間かけるのに対して,遅い生徒は20時間かかっており,成績は12.5%程度低かった
みたいな結果が出ておりまして,単純に宿題の量を増やせばいい,とも言えないみたいなんですよね.
研究チーム曰く,
この研究結果によれば,大量の宿題を出せば,生徒間の不平等が拡大し,宿題を必要としていない生徒の学力向上は最小限にとどまることがわかった.
したがって,学校の効率性の観点から,また,学校における公平性を向上させるために,すべての生徒の成績を最適化する教育方針を確立するべきだ.
とのこと.宿題をなくせばいいでもなく,増やせばいいでもなく,生徒全員の成績の向上に最大限寄与するような量を設定するよう努めるべきだ,と.そんなわけで,研究チームは,例えば中学2年生には1日60~70分程度の宿題を課すのがいいんじゃない?とすすめておられます.
ってことで,宿題論争の決着はまだ先になりそうですが,前提として,少しでも科学に根差した教育が行われていけばいいなーとか思いました.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!